2016年1月16日土曜日

先進国と似て非なる中国市場 社会主義の構造矛盾が顕在化

 東京株式市場は年明けから、6日連続の下落となった(6連敗は戦後初らしい)。海外に目を転じれば、中国経済の先行き不安、北朝鮮の「水爆」実験、サウジアラビアとイランの中東情勢などなど話題に事欠かないスタートとなった。

 「騒ぐ申(さる)年」という株の世界の格言に引っかけて、波乱という人もいる。ただ、データ主義の筆者は、日本の株式市場では、年初1週間の株価上昇率と年間の株価上昇率との間はあまり相関がない(相関係数0・25。1に近づくほど相関が大きい)ことを知っている。プロ野球の開幕戦だけでペナントレースの行方が占えるわけではないので、波乱かもしれないが、そうでもないかもしれず、まだ何もわからないとしか言えない。

 ただし、中国の株式市場の動きは不気味である。年明けから上海株は暴落した。これは昨年からの一連の動きであり、一過性とは言い難い。

 そもそも中国株は、1990年に上海、91年に深●(=土へんに川)に証券取引所が開設されたが、社会主義の元での実験的な位置付けであった。中国の証券取引所では、基本的に国有企業が上場されているが、上場後も国有企業のままというのが普通である。

 たしかに、国家株、法人株(国有企業が持ち合いで保有する株)など非流通株は、これまで全株流通改革という名の元に、形式的には売却解禁が進んできた。

 ところが、実際に非流通株の株主が売却解禁株を売却した比率は低く、非流通株主の上場企業への支配力はまだ大きい。つまり、中国の株式市場は国有企業の資金調達の場であるが、国有企業が民営化され、民間によってガバナンス(企業統治)がなされる場ではない。

 一方、資本主義国の証券市場は、民間企業の資金調達の場であるとともに、民間企業を民間でガバナンスする場であり、両者は大きく異なっている。筆者は、企業を誰がガバナンスするかという点は、長期的な経済成長に大きな違いをもたらすと考えている。

 しかも、中国における社会主義の下での資本主義的な株式市場は、あまりに明示的または非明示的な規制が多く、自由な価格形成を行う場になっていない。社会主義から資本主義に移行すれば別であるが、社会主義を維持するためには国有企業を完全に民営化できず、規制は残らざるを得ない。

 日本から中国の株式市場をみるとき、このような中国の独特の仕組みを忘れている人が多い。これまでは、社会主義の下での資本主義的な株式市場の矛盾はあまり顕在化してこなかった。証券会社も中国株の目先の値上がりにのみ注目して、社会主義国であるという本質を忘れている。

 今の中国株式の動揺は、筆者には、社会主義の下での資本主義の構造的な矛盾の一部が顕在化しているように見える。これは株式市場に限らず中国経済全体でもいえることだ。もしそうであれば、中国危機は長期化するし、それが崩壊したときの影響は大きいだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)

記事URL
http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160115/dms1601150830011-n1.htm



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